商圏分析の方法と言っても、新規店を出店する場合と既存店の商圏を見直すのとでは、その方法は全く異なります。
新規店を出店するときは、人口の分布や年齢別人口、競合店の状態など詳細な情報を必要とします。
既存店の場合は、現状の客様の分析、競合店分析から今後の販促方針を決めるための情報が必要となります。
商圏とは
販売促進を考えるうえでも「商圏」はとても重要です。
チラシを折り込むにしてもエリアを決める必要があります。広域に入れれば入れるほど、費用も掛かり無駄が生じます。
それゆえに、適切な商圏を決めるようにしましょう。
商圏を考えるうえで大切なのは、自店の立地から見た幹線道路や川、線路です。なぜならば、これがあると地域が分断されてしまうからです。
通常商圏を決める場合は、飲食店で半径1km以内、郊外型でも3~5km以内です。クリーニング店であれば1km以内ですし、喫茶店であれば500m以内が目安です。
既存店舗の商圏分析
既存店舗の商圏を調べる最大の目的は、新規客の獲得です。商圏にどれくらいの人口がいるのか、顧客獲得率はどれくらいなのか、ということを調べた上で新規客を獲得するためのプランを立てないと上手くいかなくなります。
地図上にお客様をプロットする
現状の商圏を把握する方法は、お客様の住所を地図上にプロットすることです。
これをすることで、お客様が、どの方面からの来店が多いのか、どこに集中しているのかの分布が一目でわかります。また、分布の状態から確実な商圏が解ります。
遠くに分布しているお客様は、多くの場合、近隣のお客様の紹介ですから、商圏に含んではいけません。
まずは、商圏を把握しなければ、次の段階に進むことはできません。
地図上に競合店をプロットする
お客様の住所をプロットすれば、次に、競合店をプロットします。
自店からどれくらいの距離にあるのかを把握し、商圏がバッティングするのか、そうでないのかを掴むだけではなく、何をいくらで売っているのかを調査し、次の手をどうするのか考えなければいけません。
町名ごとに区割りをする
地図上に、町名ごとに区割りをします。
例えば、大阪市西区靭本町は1丁目と2丁目があります。町名とは靭本町1丁目が一つの単位です。なぜ単位を町ごとにするのかと言いますと、市役所などの人口分布には町ごとの男女別・年齢別人口と世帯数が出ているので地域の把握ができるからです。
そうか!
区割りの中に数字を記入する
区割りした中に数字を記入します。記入する数字は、見込み客の数です。
クリーニング店であれば世帯数、若い女性層をターゲットにしている美容室であれば、20~30歳の女性の数を記入します。
次に、自店のお客様の数を記入します。そして、自店のお客様の数を見込み客の数で割った数字を記入します。
これがシェア率です。
見込客数が100人、自店の客様の数が5人とすれば
5÷100 = 5% になります。
目指すところは、町のシェア率40%です。
どこから攻めるのか?
地図の準備ができれば、どこから攻めるのかを考えます。
商圏を割り出したところ、10町だったとします。10町すべてにアプローチするのではありません。3~4町に絞ってアプローチの回数を増やします。
選ぶ基準は、自店から近いか、お客様が多いかのどちらかです。
なぜなら、自店から近かければ告知次第では、来店を促しやすいという利点があり、お客様が多ければ、口コミが起きる可能性が高いからです。
アプローチした結果、シェア率が25%を超えれば、1町を追加して、25%を超えた町はアプローチ回数を3割減らします。これを繰り返して商圏のシェア率をアップしていきます。
競合店と重なる地域では、通常のアプローチの2倍のアプローチが必要になります。
分析が基本!
新規店出店の商圏分析
新規店出店の場合の商圏分析は、既存店とは異なります。出店する以上失敗は許されません。そのためには、ターゲット人口が大切になります。
ターゲット層の人口を調べる
商圏にしたいエリアの人口分布を調べます。
30~40代女性を対象としている衣服であれば、その層の女性が想定エリアに何人いるかを調べます。そして、そのうちの〇%が商品を買ってくれると仮定し、商品単価をかければ、売上高の予想ができます。
この予想で、経営が成り立つかどうかで、出店するかしないかを決めればいいのです。
販売エリア(商圏)を決める
販売エリアは、広く捉えるのではなく、少し狭く捉える方が計画を立てやすくなります。
駐車場があるような郊外型のレストランであれば、通常のエリアは2~3kmで10分から15分で来店できるところです。
駅前や商店街の立地であれば、500m~1kmで、歩いて15分以内になります。
この中で、人口分布を調べ、競合店を調べます。それを既存店と同じように地図上に、町名ごとに区切って数字を入れていきます。
一世帯の人数を調べる
ターゲット人口だけでなく、一世帯当たりの人数も調べておくと、後に役立つことがあるかもしれないので調べておきましょう。
その中でも、年齢別の人口を同時に調べておきましょう。5年後、10年後の商圏がどうなっているか、おおよその予測ができます。
調査が必要!
車の保有台数を調べる
車の保有台数も調べておきましょう。
保有台数は、都道府県別にでていますので、乗用者と軽自動車の数がわかります。世帯数を乗用車と軽自動車の数で割れば、一世帯当たりの車の保有台数がわかります。
仮に、車の保有台数が0.8で世帯数が5000ならば、そのエリアに4000台の車があることになります。
これを町名ごとに割り出せば、町の車保有台数がわかります。
ロードサイド型の店舗の場合は、掴んでおきたい数字です。
競合店を調査
新規出店する前に、競合店を調べることは必須項目です。平均客単価、平日、祝日の来店人数、時間帯による来店人数、来店手段は徒歩か、車かを調べ、この調査結果も新規出店をするかどうかの判断材料にします。
販促ツールを決める
商圏が決まれば、販促ツールと告知方法を決めます。販促ツールは、告知方法によって決まります。
・商圏内の新聞発行数はどれくらいか。
・流通している媒体はあるか
・協力店を作ることはできるか
・ポスティングをする
商圏内の新聞発行数
商圏の世帯数を調べていれば、新聞の発行数で、どれくらいの世帯に届いているのかがわかります。新聞購読層を調べれば、年代ごとの新聞購読率がわかりますので、人口統計表の年齢別世帯数に購読率をかければ、ターゲット層にどれくらい届けることができるのかがわかります。
この場合の販促ツールはチラシです。
流通している地域媒体
多くの地域には、地域で流通している地域情報誌があります。
冊子形態のものもあれば、タブロイド判で新聞形式のものもあります。多くは1~3ヶ月に1度の発行です。
利用する場合は、媒体社に問い合わせて資料を取り寄せることです。発行部数、配布エリア、広告枠ごとの掲載料金、折込があるかどうかなど、詳細情報を調べることができます。
この場合の販促ツールもチラシになります。
協力店をつくる
販促ツールを設置してくれるような協力店を作るのも一つの手段です。
販促ツールや割引券を店内に設置してもらうことができれば、集客効果が期待できます。
販促ツールとしては、B5サイズほどのパンフレット、名刺サイズのショップカードやチケットサイズの割引券が有効です。
ポスティング
商圏をいくつかに分割して優先順位を決めてポスティングをします。初めてのポスティングの場合は、原則として店舗周辺を最優先してポスティングしてください。
この場合の販促ツールは、ポストに入れやすいサイズや紙厚を決めることです。場合によっては、透明の封筒やクリアケースに入れるのも、家の中まで販促ツールをもって上がってもらえる手段です。
販促計画を立てる
商圏が決まれば、自然と販促ツールも決まってきます。店舗の看板や店頭看板は当たり前として、
新聞折込なら何回織り込むか、ポスティングならどの地域に何回入れるかなど、販促の計画を立てることが大切です。
特に、新規店の場合は、オープンしたのにお客様の来店がないというようなことにならないように、オープン前から販促計画を立てておく必要があります。
・オープンに際して、何を使って告知をするのか、その告知日はいつにするのか?
・オープン後、何か月以内に次の告知をするのか
・来店していただいたお客様へのアプローチはどうするのか
・ポイントカードや会員カードはつくるのかどうか
・モバイル会員はどうするのか
・定期的告知はするのかどうか
など、販促計画をきっちりと立てておきましょう。
まとめ
既存店の商圏分析は、現状打開のために新規客を獲得するためにどうするかに主眼を置きます。
新規出店の場合は、出店調査のために商圏を分析します。目的によって、商圏の分析方法が異なることを認識しておくことが大切です。