毎年、起業される方はたくさんおられます。個人で起業、法人で起業と形態はいろいろあります。
しかし、起業するのは簡単だけど存続させるのは難しいのです。1年以内が30~40%、3年以内が70%、10年以内は93%といわれています。
この現象は、経営者の心の持ち方によるものが大きいのです。
「なぜ起業するのか?」、「何のために起業したいのか?」をよく考えておかないと、「起業すれば儲かるだろう」という安易な気持ちでは存続が難しくなります。
がんばるぞ!
なぜ起業するのか動機を考える
「起業すれば儲かるだろう」という考えで起業する人がほとんどです。私もそうでした。しかし、この考え方では上手く行かなくなってしまいます。
「自分さえ儲かればよい」というようでは、応援してくれる人がいなくなってしまいます。応援してくれる人がいないと事業は成り立ちません。
近江商人には「三方よし」という言葉があります。
三方とは、取引相手、世間、自社です。取引先がよくなるように努めることで、世間がよくなる。そうすれば、自社もよくなるという考え方です。
これは、「相手がよくなって、世間の人も良くなれば、自分もよくなる」ということの教えです。この気持ちがないと「事業は成功しない」と言ってお過言ではありません。
稲盛氏は、第二電電を起こすとき「動機善なりや私心なかりしか」と、半年間、自分に問うたといいます。
これは、第二電電を起こすに当たり、手をあげる企業がなかったため、「自分がいい恰好したいからじゃないのか、それとも、電話料金を下げることが国民のためになるからやるのか」ということを繰り返し自問した結果、「私心はない、国民のためだ」という確固とした答えを出すことができたから、第二電電の操業に踏み切りました。
その結果は、ご存知の通り、NTTに次ぐ2番目の電話会社になり、AUも傘下に収めていることから成功したことが解ります。
「国民のため」という想いが、成功に導いたのです。
もう一つ事例があります。
九州の某県で、県民に愛されている菓子があったのですが、この会社が倒産してしまいました。
この会社の総務部長が、倒産後、お得意様を一軒一軒訪ね歩いたところ「あのお菓子がなくなって残念や」ということを何件も聞いたそうです。
その時に、「この県には、この菓子がいるんだ。皆が待ってくれている想いに応えなければ」と思ったそうです。
そして、元の従業員に「お金を持ち寄ってもう一度お菓子を作らないか」と呼びかけたところ、数十人が集まりお菓子作りが始まったそうです。
今では、この菓子メーカーは、地元で愛される存在になっています。
この会社の場合も「世のため人のために」という善の想いから出発して成功しています。
この事例からも解るように、起業するときは、「何のために起業するのか、それは、世の中の役に立つのか」という視点で考えると良いということです。
これが、企業が利益を上げる基本的な考え方なのですが、「自分がよければ…」と考えているようでは、一時的には良いかもしれませんが、長期的に見ると商売が長続きしないということです。
何のために起業したいのかを考える
次に、起業する真の理由を考えます。もちろん、会社が倒産したから起業するしかない、上司ともめて、見返すために起業するなど、やむを得ず起業される場合もあります。
それでも、何のために起業するのか、大義名分を考えた方がよいでしょう。
京セラの名誉会長 稲盛和夫氏は、事業の目的意義を明確にしなければいけないと言っておられます。
つまり、何のために仕事をするのかを具体的にする必要があるのです。
これをミッション(使命)と言い換えてもよいでしょう。
これが明確になると、脇目も振らずに一意専心することができるので会社は伸びていきます。
起業するときに、このようなことを考える人は少ないのですが、ぜひ、考えて事業の組立をして欲しいと思います。
計画もいるよね!
誰に売りたいのか考える
取り扱う商品やサービスは、誰に売るのかを考える必要がります。
30代の主婦というような漠然としたものではなく、具体的な客層を考えてください。
例えば、
・30代の未就学児までの子育てをしている主婦
・22~25歳までの働く女性でファッションに気を遣う人
・60代の男性で、一旦、仕事をリタイヤし今も元気に働いている人
というように具体的な客層を絞ることです。
客層を絞ることで、どのような販売促進をすればよいのかが見えてきます。
60代の男性であれば、SNSやネットは弱いです。その代わり、新聞や雑誌、電波などの媒体は有効です。また、訴求する内容も変わってきます。
ターゲットは具体的に!
どのような方法で売るかを考える
先にも言いましたが、ターゲットを絞ることで販売方法が見えてきます。
・顧客に直接販売するのか?
・商社や卸に販売するのか?
・小売店に販売するのか?
ターゲットが決まれば、販売方法が決まります。販売方法が決まれば、販売促進の方法がきまります。
顧客に直接販売する
顧客に直接販売するのは、2つの方法が考えられます。
まずは、通販です。
通販で売る場合は、ネット、DM、ラジオ、TV、CATVが主な媒体です。
ネットの場合は、アクセス数を集める努力をしなければいけません。
ネット広告を出す、あるいはSEOに力を入れてアクセスを集めるということをしないとどんなに立派なWEBサイトがあっても販売に結び付きません。
もちろんターゲットによっては、有効でない場合もあります。
DMの場合は、起業当初は顧客名簿がありませんので、名簿を購入する必要があります。ターゲトをしっかりと決めていれば、名簿業者がそれにあった名簿を用意してくれます。
気をつけたいのは、一挙に全名簿に送るのではなく、テスト送付することをお勧めします。
テスト送付の数は300~5000通。その反応によっては、DMの内容を変える必要があります。くれぐれも、一挙に送らないようにしてください。
ラジオの場合は、ターゲット層が視聴しているラジを番組でコマーシャルする必要があります。詳細については、ラジオ媒体を扱っている広告代理店か、ラジオ局に直接、問い合わせると教えてくれます。
TVの場合もラジをと同様ですが、テレビを媒体として扱っている広告代理店を通さないと出すことはできません。TVの場合は、非常に高額になるのでふんだんな予算が必要です。
CATVの場合は、比較的安く掲載できます。テレビショッピング専用チャンネルも存在します。制作内容が購入したくなるように作ることが難しいことと視聴者の数は、そんなに多くはありません。
以上が、簡単にまとめましたが、顧客に直接販売する方法です。
起業の資金はどれくらい必要か
起業する上でどれくらいの資金が必要でしょうか?
まず、開業する上で必要最低限揃えなければならないものを紹介します。もちろん、業種によりかかる費用の差はあります。
事務所賃貸経費
事務所の賃貸契約に敷金・礼金が必要になります。小規模であれば経費を抑えることができます。
これ以外にも、ネット回線や電話回線の整備などの必要になります。
パソコン
現代の仕事に欠かせないのがパソコンを初めとする電子機器です。プリンターやコピー機(複合機を使えば1台ですみます)も必要になります。
リースを組むことが多くなるので、複数社の見積を取ってランニングコストを抑えることを心がけましょう。
WEBサイト
今や商いをする上で欠かせないのがWEBサイトです。
飛び込みや紹介で営業に行ったとしても、必ず、WEBサイトは見られます。これがないと信用が得られないと言っても過言ではありません。
制作するのもそれなりの費用がかかります。しかし、なければ信用されなく、見込み客を逃してしまいます。
そこでお勧めなのが、自分でホームページを簡単に作成できるジンドゥなどの無料サービスを利用することです。
込み入ったものでなく、会社の事業内容や概要がわかるもので十分です。利益が出た時にプロに依頼してつくりなおせばよいのです。
挨拶状や名刺
起業したばかりの時に、今までお付き合いのあった方々に、近況の報告と共に起業した旨を伝える挨拶状を送付しましょう。
「起業したのなら」と、仕事を依頼してくれる方がおられるかもしれません。
名刺は必需品です。ビジネスでは、初対面の人に自分の存在を知ってもらう必要があります。その証が名刺です。
名刺は、社名・氏名を書くのではなく、営業品目やその詳細、自分が覚えてもらいやすいように顔写真やイラストを入れておくような工夫も必要です。
弊社の場合は、3つ折りになっていて、営業品目を一つずつ紹介したり、リネンやトップの考えを載せています。
名刺も営業ツールとして活用できる工夫が必要です。
営業資料
営業資料も大切です。
導入しようとしたときに料金やサービス内容が具体的に解らなければ、受注にはつながりません。
しかし、印刷した綺麗なものを作成する必要はありません。パワーポイントなどのソフトで作った資料で十分です。内容が伝われば問題ありません。
大黒さまがいたらな!?
会計は経営の根幹
自分が会計に精通していて、帳簿を付けることができるなら話は別ですが、できない場合は、費用はかかりますが税理士のお世話になることです。
なぜなら、会計は経営の根幹だからです。どの商品が収益性が良いのか、経費が掛かる原因は何かなど、帳簿から見れば改善点が解ります。
稲盛氏は「会計が解らず、経営ができるか」とおっしゃるくらい大切です。
どんぶり勘定で会計をしていると改善点が解らなくなるだけでなく、資金繰りまでも大変になってきます。
必ず、会計はきちんと月次で見れるようにするべきです。
まとめ
起業する前に用意することはいくつもあります。
その中でも大切なことは、気持ちの部分です。なぜ起業するのか、何のために起業するのか、その動機は善なのかということです。
もちろん、誰に売るのか、売り方はどうなのかも大切です。
それ以上に大切なのが「心」です。